最終話 満月祭/狐火の祭
 それから四年後。私は二十歳になった。
 今日は『満月祭』(まんげつさい)が行われる日。
 満月祭とは、三年前から稲荷神社で行われる夏の満月の日に行われる祭りだ。
 石段を踏みしめる。
 ざわざわ木が擦れあう音が響く。
 しゃらんしゃらん。
 お気に入りの簪が揺れる。
 そうだ、お祭りに行く前にお祈りして行こう。
 私はそう思い鈴を鳴らそうとした。
 そのとき――

「お待ちしていましたよ……ずっと」

 声がしたほうを振り向くと
 宗司さんが柔らかな微笑みを浮かべていた。

「……っ! 宗司さんっ!」
 私は駆け寄りその胸に飛び込んだ。
「これは夢……?」
「夢じゃないですよ」
 宗司さんは痛いほど強く私を抱きしめる。
「ずっとあなたをこうしたかった」
「……んっ……」
 宗司さんが私に口づけをする。
「会いたかった……」
「私も会いたかった……!」
 やがて口づけは深くなり――。
「私とまたお祭りに行っていただけますか」
 宗司さんが手を差し出す。
「はい!勿論!」
 私たちはいつかしたやりとりをし、手をつなぎ屋台の中へと消えていった。