――こつんこつんこつん。ざわざわ。
昼間神社の石段を登っていると泣き声が聞こえた。
「さみしい。さみしいよぉ。だれかぁ……」
私は駆け足で登り切り鳥居まで辿り着くと、そこには背を向け泣いているこどもがいた。
もしかしてあの子が宗司さんが言っていた子……?
そう思いながら私はかがんでこどもに声をかけた。
「どうしたの?」
「わあああああ!」
こどもは驚き大粒の涙を溜めた目を飛び出んばかりに大きくした。
「驚かせてごめんね」
「……だいじょうぶ。あのね、ここね、だれもこないからね、さみしいの……」
たどたどしくこどもは言う。
「ぼくね……ひとりぼっちなの。ともだちいないの」
人差し指をつんつんくっつけながらうつむく。
「……そっか。じゃあお姉ちゃんと友達になろうか!」
こどもの目が先ほどよりも大きくなる。
「いいの? おねえちゃんまいにちきてくれるの? いっしょにあそんでくれるの?」
「うん! 元々ここにはよく来るし」
「そうなんだ! ぼくはそうた! おねえちゃんあそぼ!」
そうたくんはぱっと花が咲いたように笑った。
それから毎日そうたくんと遊んだ。
「ねえ、おねえちゃん。つぎはなにしてあそぶ?」
腕を大きく広げ、あははと人懐っこい笑顔でそうたくんは笑う。
出会ったときに泣いていたのが嘘のようだった。
「お前らここで何してんだよ」
「わあああああ!?」
びっくりしてそうたくんの目がまた飛び出そうになる。
森の茂みから坊主頭のがたいのいい男の子が出てきた。
年はそうたくんとおなじか少し年上くらいに見える。
「何してるんだって聞いてるんだよ」
目じりを釣り上げ男の子が言う。
「……つとむくん……そんな言い方はよくないよ……」
さっき男の子が出てきた茂みから今度は小柄な女の子が出てきた。
「うわああああ!」
そうたくんの叫び声が響く。
「ご……ごめんなさい!!」
すすっと小柄な女の子がつとむくんと呼ばれた男の子の後ろに隠れる。
こちらも年はそうたくんとおなじくらいに見える。
「おおげさなやつだな」
がたいのいい男の子は大きくため息をついた。
「……お前名前は?」
そうたくんを指さす。
「ぼ、ぼくはそうた」
「……お前は?」
私を指さす。
「月島あかり」
「お前らここで何やってるんだ?」
「ここで遊んでいるの」
私が答える。
「二人だけでか?」
「うん」
「……」
「おれが仲間に加わってやる」
「え!? ともだちになってくれるの!?」
そうたくんの目がきらきらと輝く。
「な、なんだ? お前ころころ変わって変なやつだな」
「へ、へんなやつ……!」
そうたくんはショックのあまりほろりと涙が出る。
「……つとむくん」
女の子が男の子の裾を引っ張ってとがめる。
「わ、悪かったよ……。おれはつとむ。こっちはさき」
「……よろしくお願いします」
「二人だけじゃ遊びもつまんねーだろ。おれたちも仲間になってやる……その……と……ともだちになってやる……」
「わーい!!」
そうたくんはばんざいして喜んだ。
「よろしくね!つとむくん!さきちゃん!」
おう、うんとそれぞれ頷いた。
私はその光景にほほえましくなった。
第四話 神社のこども/狐火の祭